芥川賞作家の又吉直樹氏の作品「火 花」の中の人物が語る新渡戸稲造
久々に小説を読書していたら、以下のこんな文章に遭遇しました。さりげなく真実がパラリと
小学生の頃、図書の時間に他の同級生達が「動物図鑑」や「はだしのゲン」の取り合いをしている中、神谷さんは偉人と呼ばれる人達の人生が綴られた伝記を貪り呼んでいたらしい。
「絵はな、表紙と活字が少しだけやったんちゃうかな。あとは全部活字」
神谷さんは、活字が多い本だったことを強調したいようだった。
「新渡戸稲造が何者か知っているか?」
「五千円札の人ですよね?」
「そうや、あの人も色々やった人ねんで。そんなんも書いてたわ」
「そうなんですね。何をした人なんですか?」
「忘れたけど、読んだときは感心したの覚えてるわ」
神谷さんはいかに伝記が面白いか熱弁を振るった。神谷さんの言葉によると偉人が成し遂げたことは文章上でも凄いとわかるのだが、その人となりは大概が阿呆であるらしく、自分の伝記があれば皆が驚くと幼き頃に思ったらしい。
「火 花」又吉直樹著 文春文庫より引用
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