【オチボ新聞】馬鹿と友情が時代を変える。

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高円寺から阿佐ヶ谷に引っ越しの作業で、一週間ほどは落ち着かない日々がつづいていました。

この10年間で何度引っ越ししたことやら。

仕事場の移転を含めると、7回でした。

今回の引っ越しはある意味、自分の人生の何度目かの節目になりそうです。

良きにつけ悪しきにつけ、現状の編集から、PR、便利屋と、何でも屋にやるスタイルになったのは、10年前からでした。

この10年を振り返るタイミングで、残っていた手紙を読み返したりして、一通のパソコン、あるいはワープロで書かれた一枚の手紙を見つけた。




それは20代前半の頃に、アルバイト先の居酒屋で知り合い、よく飲み、殴り合ったりした旧い友人からの手紙だった。

当時ぼくらは共に井の頭公園近辺に住み、吉祥寺近辺で遊んでいた。彼よりぼくは一才下の同年代で、ともに、格闘技と文学が好きだった。彼は九州生まれで体躯がでかく、常に全身に不満とロマンのオーラを撒き散らしていた。体は小さいながらも、ロマンでは負けないと自負するぼくと彼は、よく酒を飲み交わし、話し合った。

一度、吉祥寺のガード下で通りすがりの10人ほどを巻き込む大げんかをした。それが、彼とのぼくとの絆を作ったのだと思う。

彼が九州に帰ってから、5年、10年のスパンで時々あった。

そう、あれは、2006年の初夏、5年間経営していた飲食店を畳んだ頃、お世話になった方々や、取引先、仕事先にハガキを出した。

すると、古い友人から一通の返信の手紙が届いた。

それは、ワープロで書かれたものだった。

語ることが好き、文学が好き、ロマンが好き、そんな彼は、文字になるとなぜか口下手になる。

その手口が、よくわかる。おそらくは口頭の言葉を奥様か、あるいは誰かが、タイピングしたものであった。

当時、店を閉め、一時的に自宅とは別の超木造アパートをオフィスにして仮住まいのような仕事をしていた時に、何か身に染みるような心持ちで、その一見無機質なワープロの文字を読み、そして彼の想いの酒に酔いしれたことを思い出す。

オチボ様

いつもの事ながら返事が遅れて申し訳ない。

何かを格好をつけてしびれる言葉でも送ってやろうと思うが何せ中身がないゆえに何もでてこない。

ゆえに時間がかかってしまう。

お前が言う通り馬鹿は馬鹿なりだ。

一度はお前の店で下手な歌をがなり声で歌ってみたい気持ちは多少はあったが残念だ。

俺も自分を自分にしたくて思考錯誤の毎日だが思い通りにはいかないものだ。

これも一つの前向きな転機だろうし、さらに一皮むけたオチボの活躍を期待している。

この前、この俺が住む土地も水害にみまわれた。想像を絶する川のうねりを見た。

人生、時々想像を超えることが起きる。

人間の考える範囲など小さなものだ。

お互いこれからいろいろあるだろうがその事を楽しんで嬉々とやっていこう。

何もできないが焼酎をおくっておく。

いい焼酎だ。

ロックが旨い。

しみじみ飲んでくれ。

また一緒に飲もう。

KK

この手紙をそえて、要するに九州の名産の焼酎が数本送られてきた。

無論、その日から、すぐに美味く飲み干した、ぼくは。

酒と歌と喧嘩ばかりの20代初頭の頃の友人は、

今は九州の地元の名士となった。

で、馬鹿は馬鹿なりに、進化する。

このぼくも、変わって行く。

馬鹿は馬鹿なりだ。

お利口さんには、馬鹿はできない。

馬鹿は常に新しく、古い。

新しくなるために

来年もまた、ぼくは引っ越します。

しかも、意外な遠い場所へ。

何せ、開拓者なんで。

ふるさと引きずって。

移動する。




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