「美しい、道草。」
~青森県立三本木高校同窓会東京支部 東京三高会会報より

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青森県立三本木高校同窓会東京支部 東京三高会会報
「東京三高会だより 三木野ヶ原」第26号(平成21年6月1日発行)より


数年ぶりに目標を持って、ヘタクソながら走りはじめました。もしかしたら、30代末以来に、本気でまた何かやらかそうとしているような自分がいたりして、何やら原点帰りが必要かな、と思って本棚を眺めていたら、数年前の高校の同窓会の会報に書いた文章が出てきました。タイトルどおり、生まれてこの方、相も変わらず、くねくねやっちょりますが、いつもコレでも、本気なんだなぁ、ぼくは。

まあ、読んでください。そして、一緒に、(くねくね)歩きましょう。

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美しい、道草。

私は、三本木高校、空手部卒業生である。

厳密には、普通科卒業なのだが、何か最近、空手部卒業、という気がする。

しかも、空手道部ではなく、空手部なのである。

空手道。

その、道、にこだわる時期もあった。

が、最近、空手は空手でいいな、と思う。

空の手から何かをつかむような。

あの頃の私の空手。

それは道なんてものじゃなかった。

道草、というか、土手歩きというか、そんな不細工な空手。

まさに道ならぬ、道草空手。

新入生で入部した空手部は創設四期目と若かった。

歴史も伝統もなかった分、夢と野望ばかりが満ち溢れていた。

あたかも三木野ヶ原の原野を開墾するよな、開拓魂。

と、いえば、かっこはいいが、ただ強くなりたい、という若者の未熟な野望がときめき、時にくすぶる。

そんな若き道草は、不思議な顧問の先生により、一つの豊穣に導かれる。

汗と唾が飛び交い、拳と蹴りが交錯する稽古では、時として、感情が荒く張り裂ける瞬間がある。

それが垣間見えるや先生は稽古を止め、いつもこんな言葉を発した。


もっと、ロマンチックに。


立ち止まったまま、私たちの心は首を傾げる。

ロマンチックって、どういうことさ?

武道に浪漫なら腑には落ちるが、さながら夜更けの歌謡曲。

などと、練習後に揶揄したもの。

その先生の指導のレトリックは、こんな活用だった。


ロマンチックに。 ドラマチックに。

且つ、劇的に。 そして、美しく。


そんな美辞に彩られながらも、師の教える稽古はいたって地味だった。

技も、立ち方も、動作も、無駄なものは一切殺がれて。



移り気な私は、使い物にならぬ補欠選手だった。

一度投げ出して、恋愛道に挑んだら、思い切り相手に振られ倒された。

そのショックを払拭せんがために、ようやく空手の稽古に没頭する。

痛んだ胸に、ロマンチックとドラマチックという師の言葉を刻みながら、

ヘタクソな突きを突き、空を蹴りつづけた。

生き方も、運動も、恋愛も、学問も全部ダメな私は、一点集中しかないと思った。

一つの技だけを磨き、一つの技だけの試合方法に決めた。

万年補欠、天下無名、技も一つだけの変なスタイルの私は、

運良く県大会を個人戦で準優勝し、空手部初のインターハイ選手になった。

同時に団体も同様準優勝。

つい昨日までの万年一回戦敗退校には、まさに夢のような成果だった。

その後、三高空手部は、師の指導の下に強豪選手を次々と輩出し、一つの栄光の時代を築くことになる。


三高を卒業して上京、十数年後の三十代後半、里心がついてきた私は、故郷に関する文献を読み始める。

ある日、司馬遼太郎氏の紀行文集「街道を行く」第三巻「陸奥のみち」を手にとり驚く。

八戸の著名な歴史家の子息として、我が空手の師匠小井川年男先生の名前が、

執筆当時の若き学生として司馬遼太郎氏に、さも親しみ深く語られているではないか。

師の教えの源泉を知るようで、故郷、母校、そして三高空手部への誇りが一気に充満した。

その感動が、故郷への愛着と憧憬に生きようという、その後の人生の行くべき道筋を決定した。


その小井川先生も、今は十和田西高校で教鞭をとり、引退と聞く。

さあ、もう一丁、教えを請いに訪ねてみようか、と思う。

新たなる人生のはじまりに向けて。



そんな想い出が軸となる、私の三本木高校のイメージは、

実にロマンチックで、ドラマチックで、劇的で、

そして、美しく豊穣なる道草なのである。



青森県立三本木高校同窓会東京支部 東京三高会会報
「東京三高会だより 三木野ヶ原」第26号(平成21年6月1日発行)より

参考文献

東京三高会Web | 青森県立三本木高等学校同窓会東京支部

青森県立三本木高等学校・附属中学校

小井川先生、大変ご無沙汰です。
遠くない将来、吟醸純米酒持って、遊びにいかせていただきます。
いろいろ、すみません。
っていっても、先生がインターネット、見るわけないもんな。
されど、いろいろ、すみません。

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